窓を拭き終えて脚立から降りたら、腕が妙に重い。その日は違和感だけで、翌朝になって腕が上がらない。
年末によくあるのが、この「次の日に来る」パターンです。
高いところの掃除のあとに肩を痛める方は、毎年いらっしゃいます
当院でも、この時期になるとご相談が増えます。
心当たりをうかがうと、「重いものを持ったからかな」とおっしゃる方がいます。ただ、実際に聞いていくと、重さが原因だったことはあまりありません。
共通しているのは、腕を上げた状態での作業時間が長かったことです。
肩を痛めるのは、重さではなく「上げていた時間」
窓を拭く。換気扇のカバーを外す。照明の傘を洗う。カーテンを外して掛け直す。エアコンのフィルター。
どれも腕が上がっています。1つずつは10分でも、合わせると1時間を超えることは珍しくありません。
肩は、腕を上げるときに肩甲骨が一緒に動いて、負担を分けています。腕が疲れてくると、この肩甲骨の動きが先に落ちます。すると肩だけで腕を上げることになる。
痛めるのは、たいてい作業の後半です。
去年と同じ段取りが、腕を上げる作業を全部先頭に集める
掃除は上から下へ、と言われます。ホコリが落ちるので、手順としては正しいです。
ただしこの順番でいくと、腕を上げる作業が最初にまとまります。
照明 → 換気扇 → 窓の上 → カーテン。ここまで休みなしで来て、そのあと床を拭く。床にかかる時点で、肩はもう限界を越えています。
掃除として正しい順番が、肩にとっては一番きつい並びになっている。毎年この段取りでやってきた方ほど、疑わずに同じ順番でいきます。

もうひとつの「去年と同じ」——台を出さずに手を伸ばす
高い場所を、台を出さずに手を伸ばして届かせる。これも毎年見ます。
「そこは前から手を伸ばしてやっていたから」。去年もおととしも、それで足りていた。だから今年も同じようにやる。
でも、肩甲骨や肩まわりの動きは、1年で変わります。少し硬くなっていても、自分では気づきません。
動かなくなっているのに、動いていた頃のやり方をする。ここで痛めます。
段取りの記憶は残ります。体のほうが先に変わります。
ふだんから高い棚や押し入れで肩がつらい方は、高い棚・押し入れの物を取ると肩が痛い方へもあわせてご覧ください。
「台を出すのが面倒」——それは本当です
ここまで読んで、「いちいち脚立を出していられない」と思われたかもしれません。
面倒なのは本当です。出して、広げて、動かして、またしまう。手を伸ばせば済む場所なら、そのほうが早いに決まっています。
変えてほしいのは、「届くかどうか」で判断するのをやめる、この1点だけです。
届く場所でも、つま先立ちになって、腕を伸ばしきって、首を反らしていたら、肩には一番きつい形になっています。この3つが同時に起きているのが、手を伸ばしているときの姿勢です。
台に乗って、拭く面が自分の胸の高さに来るようにする。それだけで肩のかかり方が変わります。
判断の基準を「届くか」から「どの高さで作業するか」に変える。台は、そのための道具です。

段取りのほうは、2つだけ変えれば足ります
年末にまとめてやること自体は、変えなくて大丈夫です。
1. 上を向く作業だけ、2日に割る
照明とカーテンを初日。換気扇と窓を次の日。
床や水まわりは、どちらの日に入れても肩には影響しません。
「全部を2日に分ける」のではなく、上を向く作業だけを2つに割ると考えてください。これなら予定は大きく変わりません。
2. 上を向く作業は15分で切る
腕を上げる作業は、15分でいったん腕を下ろします。タイマーをかけるのが確実です。
休むのではありません。その時間で床や棚の下を拭く。肩を下ろしたまま続けられる作業に移るだけです。手は止まりません。
「やめずに続けるために区切る」という考え方は、草むしりをやめないための「マイルール」5つと同じです。
翌朝、肩が重かったときの見分け方
使ったあとの重さやだるさは、2〜3日で引いていきます。これは心配いりません。
次のような状態が続くときは、一度見てもらったほうが安心です。
- 腕を上げる途中の決まった角度で、ズキッと痛みが出る
- 夜、寝返りで目が覚める
- 1週間たっても、服を着る動作がつらい
とくに夜の痛みは、使いすぎの重さとは別のものが始まっているサインのことがあります。眠れない日が続くなら、我慢して年明けを待たないでください。
今年の肩に、今年のやり方を
大掃除をやめる必要はありません。
去年と同じ段取りでいかないこと。届くかどうかで決めないこと。変えるのはこの2つだけです。
年末に痛めてしまった場合も、早いうちなら動かし方の調整で楽になる方が多いです。まずは確認だけでも大丈夫です。
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