スマホを置いたあと、首の後ろが重い。肩に何かが乗っているような感じが、しばらく残る。
そういう方に、まず試していただきたいことがあります。背すじを伸ばすことではありません。ひじを、どこかに預けることです。
順番が逆に感じるかもしれません。でも、この順番のほうが続きます。理由からお話しします。
「姿勢を正す」が5分ももたない理由
「スマホを見るときは、背すじを伸ばして画面を目の高さに」。よく聞くアドバイスです。
言っていることは正しいと思います。ただ、その姿勢を長く続けられた方に、私はあまり会ったことがありません。
理由ははっきりしています。腕が重いからです。
片方の腕全体の重さは、体重のおよそ5%前後といわれています。体重55kgの方なら、片腕でおよそ2.5〜3kg。1リットルの牛乳パック3本ぶんです。
スマホを目の高さまで持ち上げるということは、その3kgを肩の筋肉だけで吊り続けるということ。姿勢を正した瞬間から、肩は休めなくなります。根性が足りないのではなく、無理な仕事を肩に頼んでいるだけです。
下げれば首、上げれば肩。この板挟みから抜ける
ここが、スマホ姿勢のいちばん厄介なところです。
- 画面を下げる … 腕は楽。でも首が前に倒れる
- 画面を上げる … 首は楽。でも肩が疲れる
どちらかを我慢するしかない。そう思って過ごしてきた方が多いはずです。首を守れば肩が悲鳴を上げ、肩を守れば首が前に出る。
この板挟みから抜ける方法が、ひじを預けることです。
腕の重さを机やクッションに下ろしてしまえば、肩は「吊る」仕事から解放されます。そのうえで手の位置が上がるので、首も前に倒れずに済む。ひとつの工夫で、両方いっぺんに軽くなります。

首が前に出た状態が体に何を起こすのかは、ストレートネック・スマホ首の原因と改善方法でくわしく書いています。
首のつらさの全体像は首こり・首の痛み|症状別ガイドにまとめています。
工夫① ひじを預けて、肩の力を抜く
ソファで見ているときに、首がぐっと丸まったまま固まっている。よく見かける姿です。
ここで、こう思われるかもしれません。「うちはソファだから、机なんてないよ」。
机の前に座り直してください、とは言いません。そこが、いちばんくつろげる場所なのだと思います。変えていただきたいのは、ひじの下に何か1つ入れることだけです。
- テーブルで見るとき…机にクッションか座布団を置き、その上に前腕をのせる
- ソファで見るとき…ひざの上にクッションを置き、その上にひじをのせる
- 立っているとき…スマホを持たないほうの手で、持っている側のひじを下から支える
3つ目は、電車でもレジ待ちでもできます。道具がいりません。
高さの合わせ方(鏡がなくてもわかります)
目安は「肩がすくまない高さ」です。
ひじを預けたときに、耳と肩のあいだが広がった感じがすれば合っています。反対に、肩が耳のほうへ上がってくるなら、クッションが高すぎます。1枚減らしてください。
正解の高さは人によって違います。肩の力がふっと抜けた高さが、その方の正解です。

以前、ソファで見ていると首が丸まってしまうという方に、ひじの下にクッションを入れて試していただいたことがあります。そのとき、ご本人からこう言われました。
腕を下げすぎなきゃ、首が下がりづらいですもんね
私が説明するより、ずっと的確な言葉でした。腕の位置と、首の位置。この2つはつながっています。
工夫② 見やすくして、顔を近づけない
「文字を大きくすると、一画面に入る量が減って、かえって読みにくい」。これもよく言われます。
そのとおりです。全部を大きくする必要はありません。長く読むものだけで十分です。ニュース、電子書籍、LINEの長い連絡。この3つのときだけ、文字サイズを1段階上げてみてください。
大きくする目的は、読みやすさそのものよりも、顔が画面に近づいていくのを止めることにあります。
見えにくいとき、人は画面を目に近づけているつもりで、実際には首から前に出ています。頭は5kg前後あるといわれていて、それが前に出るほど、首の後ろは支えるために働き続けることになります。目のつらさと首のつらさがつながる話は、肩こりと目の疲れの関係にまとめました。
動画や電子書籍など30分以上見るときは、スタンドに立てて両手を離してしまうのがいちばん楽です。専用品でなくても、箱や本を重ねた上に立てかけるだけで足ります。
工夫③ やめるのではなく、姿勢を変える
スマホの見すぎがよくないことは、たいていの方がご存じです。施術中に「スマホの長時間は基本よくないよねー」と、ご自分のほうから言われる方が多いくらいです。
それでも、ショート動画はつい見てしまう。時間で区切るのは、正直むずかしいと思います。
ですから、時間を減らす話はしません。やめる必要もありません。見てしまう前提で、そのあいだの負担を減らすほうが現実的です。
- 動画1本、記事1本の終わりで、一度腕を下ろす
- 持つ手を左右で入れ替える
- 立ち上がってコップ1杯の水を飲む
時計ではなく「区切り」で動くほうが、続きやすい方が多いです。
そしてもうひとつ。動くのは、つらくなる前がいちばん効きます。痛みが出てから動かすと、痛いところをかばう分だけ体のどこかに新しい無理がかかります。同じ姿勢が続くこと自体がなぜつらさをつくるのかは、なぜ「動かない時間」が肩こり・首こりをつくるのかで解説しています。
「姿勢が悪い」と自分を責めなくて大丈夫です
スマホのつらさの話になると、「姿勢が悪いから」で終わってしまうことが多いように感じます。
ただ、姿勢というのは意識だけで変わるものではありません。体が楽をできる条件がそろって、はじめて自然に整います。ひじを預けるのは、その条件を1つ作る作業です。
デスクワークの方は、同じ考え方を机まわり全体に広げられます。デスクワーク中の肩こりを減らす作業環境チェックリストもあわせてどうぞ。
こんなときは、一度診てもらってください
工夫で様子を見ていい場合と、そうでない場合があります。次の3つにあてはまるときは、自己流で続けないほうが安心です。
- 腕や指にしびれが出る…首の神経が関わっていることがあります
- スマホを控えても、朝起きた時点から重い…姿勢以外の要因も考えられます
- 頭痛が毎日続いている…原因の切り分けが必要です
しびれや強い頭痛があるときは、まず整形外科で調べてもらってください。病院と整体は、どちらが上という話ではありません。画像や検査で体の中を調べるのが病院、日々の動きのクセを見つけるのが私たちの仕事です。役割が違うだけです。
頭痛が続いている方には、肩こり・首こりで毎日頭痛がある方へも参考になると思います。
今日、ひとつだけ変えるなら
スマホを見る時間を減らす必要はありません。ひじを下ろす場所を、1つ作るだけです。
いつも座る場所に、クッションを1つ置いておく。それだけで、今夜のスマホ時間から変わります。
それでも重さが抜けないときは、スマホ以外の場面にも同じクセが出ていることがあります。当院では、その方が1日のどの動作で肩に力を入れているのかを一緒に確認するところから始めています。
