「左の外側、お尻から足にかけてしびれる感じになるんです」
当院でよくお聞きする言い方です。病院ではこう言われた、という方がとても多くいらっしゃいます。
脊柱管狭窄症はあるね。同じ姿勢を続けないようにね。コルセットしてね。
この説明は、まちがっていません。むしろ的確です。
ただ、家に帰ってから困る方が多い。「同じ姿勢を続けない」とは、何分で、何をすることなのか。そこが分からないままだからです。
この記事では、その一言を具体的な動作に置き換えていきます。
まず、なぜ「前かがみだと楽」なのか
背骨の中には、神経の通り道があります。これを脊柱管といいます。
ここが狭くなっている状態が脊柱管狭窄症です。そして大事なのは、この通り道の広さは、姿勢によって変わるということです。
- 腰をそらす…通り道が狭くなる → 症状が出やすい
- 前にかがむ…通り道が広がる → 楽になりやすい
だから、こういうことが起こります。
- まっすぐ立って待っているのはつらいのに、買い物カートを押しているときは平気
- 歩くのはしんどいのに、自転車には乗れる
- 少し腰かけて休むと、また歩けるようになる
心当たりがあるでしょうか。これは根性の問題ではなく、姿勢で通り道の広さが変わっているだけです。

「少し歩くとしんどい」は、大事なサインです
「長い距離になると、歩くのがしんどくなってくる」
この訴えもよくお聞きします。ここで確かめていただきたいことがあります。
しばらく休むと、また歩けるようになりますか?
「歩く→つらくなる→休む→また歩ける」。この繰り返しになるなら、それには名前がついています。間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。
脊柱管狭窄症で特徴的にみられるもので、歩ける距離がだんだん短くなっていないかが、経過を見るうえでの目安になります。「前は駅まで歩けたのに、今は途中で一度座る」といった変化です。
受診のときに伝えると役に立つので、覚えておいてください。

腰と坐骨神経痛の全体像は腰痛・坐骨神経痛|症状別ガイドにまとめています。
「同じ姿勢を続けないで」を、具体的にする
ここからが本題です。まず、こう思われるかもしれません。
「そう言われても、仕事中に何度も立ち上がれない」。
そのとおりです。ですから「立ち上がる」以外の方法も用意しておくのが現実的です。姿勢を変えることが目的で、立つことが目的ではありません。
座っているとき
目安は20〜30分に一度です。ただ、時計を見て守るのは続きません。区切りで動くほうが現実的です。書類が1つ終わったら、動画が1本終わったら、お茶を飲むタイミングで。
- 立ち上がって数歩あるく(いちばん確実)
- 立てないときは、座ったまま左右のお尻に体重を移す
- 浅く座り直す・深く座り直すを1回ずつ
- 足を組んでいたら、組み替える(または一度ほどく)
「長く座っているとお尻が痛い」という方は、同じ場所がずっと押され続けていることも関係します。体重を左右に移すだけでも、当たる場所が変わります。

歩くとき
「つらくなってから休む」ではなく、つらくなる前に休む。これだけで、1日に歩ける合計はかなり変わります。
- いつも同じ場所でつらくなるなら、その手前で座る
- 出かける前に、途中で座れる場所を思い浮かべておく
- 買い物はカートを使う(前かがみになれるので楽になりやすい)
- リュックにして、両手を空けておく
歩くこと自体は、避けなくて大丈夫です。休みをはさみながら続けるほうが、体力も脚の力も保てます。「歩くと悪くなるから歩かない」は、別の問題を呼びます。
コルセットは「いつ外すか」もセットです
「コルセットしてね」と言われて、朝から晩までつけている方がいます。真面目な方ほどそうなります。
ただ、コルセットは体のかわりに支えてくれる道具です。ずっと任せていると、本来支えるはずの筋肉が働く機会を失います。
ですから、こう考えると分かりやすくなります。
- つける…長く歩くとき、外出するとき、重い物を扱うとき、痛みが強い時期
- 外す…家でくつろいでいるとき、寝るとき
ただし、これは一般的な考え方です。「常時つけていてください」と指示されている場合は、主治医の指示が優先されます。迷ったときは、次の受診で「いつ外していいですか」と聞いてみてください。それだけで、答えが返ってきます。

こんなときは、すぐ受診してください
工夫で様子を見ていい場合と、そうでない場合があります。次にあてはまるときは、待たずに医療機関へ行ってください。
- おしっこが出にくい・もれる、便の感覚が鈍い
- 両脚がしびれる/股の間の感覚がおかしい
- 足首や足の指に力が入らない、つまずくようになった
- 歩ける距離が、短期間で急に短くなった
- 安静にしていても強く痛む、夜に痛みで目が覚める
- 発熱をともなう、体重が理由なく減っている
とくに上の2つは急ぎます。整体で様子を見ていい状態ではありません。当院でも、お話をうかがってこうしたサインがあると判断したときは、施術より先に受診をおすすめしています。
整体にできること、できないこと
はっきり書いておきます。狭くなった通り道を、整体で広げることはできません。それは手術や注射の領域で、判断するのは医師です。
では何ができるのか。
同じ診断がついていても、楽に過ごせている方と、そうでない方がいます。その差は、通り道の広さだけでは説明がつきません。1日をどう動いているかで変わってきます。
- どの姿勢・どの動きで症状が出るのかを、一緒に確かめる
- その姿勢を避けながら生活できるよう、動作を組み直す
- 腰をそらせてしまう原因(股関節の硬さなど)を減らす
- 歩ける距離を保つために、休み方を設計する
病院と整体は、どちらが上という話ではありません。画像で原因を確かめるのが病院、1日の動き方を組み直すのが私たちの仕事です。役割が違うだけです。
今日、ひとつだけ変えるなら
座っているときに、左右のお尻へ交互に体重を移す。これだけです。
立ち上がらなくてもできて、人に気づかれません。会議中でも、運転の信号待ちでも、テレビを見ながらでもできます。
「同じ姿勢を続けない」は、これくらい小さくしていいのです。続けられる形にしないと、意味がありません。
