出産を終えて、赤ちゃんとの新しい生活が始まった。それなのに腰が重い・痛い——「産後だから仕方ない」と思いながら、授乳・抱っこ・おむつ替えを毎日繰り返していませんか?
産後の腰痛は、単なる「疲れ」ではありません。妊娠・出産を通じて体幹の深部の筋肉が変化し、腰・骨盤まわりの支持力が低下していることが主な背景にあります。そしてその状態のまま、赤ちゃんのお世話という体への負担が続くことで、腰痛が長引きやすくなります。
作業療法士として15年間、病院・施設のリハビリ現場で多くの方の体を見てきた経験から、産後腰痛の本当の理由と、日常の中で無理なく取り組める改善アプローチをお伝えします。
こんな症状が続いていませんか?
- 抱っこしているとすぐ腰が痛くなる
- 授乳の姿勢が続くと腰と背中がつらくなる
- おむつ替えや床での作業で腰に負担を感じる
- 産前から腰が重く、出産後も続いている
- 寝起きに腰が固まった感じがする
- 腰を動かすと骨盤まわりがだるい
これらは産後の体幹機能の低下と、日常の育児動作の負担が重なって起きやすい症状です。「産後だから」と諦めず、体の変化を理解して丁寧に向き合うことが大切です。
産後に腰痛が起きやすい理由
産後腰痛には、いくつかの重なる原因があります。「体が弱った」ということではなく、出産という大きな体の変化に伴う、自然な反応でもあります。

① 腹横筋・骨盤底筋群の弱化
妊娠中、お腹が大きくなるにつれて腹部の筋肉は引き伸ばされ続けます。特に腹横筋(腹部の一番深い層にあるコルセット状の筋肉)と骨盤底筋群は、出産後に機能が低下しやすい筋肉です。
これらの筋肉は「体幹のインナーユニット」とも呼ばれ、腰椎・骨盤を内側から安定させる役割を担っています。ここが弱くなると、腰まわりの表層の筋肉が余計に働かなければならなくなり、慢性的な緊張や疲労につながります。
② 腹斜筋の機能低下
体幹の「ひねり」や「側方の安定性」を担う腹斜筋(外腹斜筋・内腹斜筋)も、妊娠・出産を経て機能が落ちやすい筋肉です。腹斜筋が弱くなると、片側に体重をかける動作(赤ちゃんを片腕で抱えるなど)のときに腰への偏った負担が増えます。
③ 授乳・抱っこ・おむつ替えの繰り返し
育児中の日常動作は、腰への負担が積み重なりやすい姿勢が多いです。
- 授乳:前かがみになりやすく、背中・腰が丸まった状態が長く続く
- 抱っこ:体幹の支持力が不十分なまま赤ちゃんの重みを支えると腰に負荷がかかる
- おむつ替え・床での作業:前屈みやしゃがみの姿勢を繰り返すことで腰に累積疲労が起きやすい
④ 睡眠不足・疲労回復が追いつかない
夜間授乳や育児による睡眠不足は、筋肉の回復を妨げます。体幹が弱っている状態で休息が取れないまま育児動作が続くと、腰への負担が蓄積しやすくなります。「疲れているのに腰も痛い」という状態が続く理由のひとつです。
自分でできるセルフチェック
【体幹チェック】呼吸と腹部の動きを確認する
仰向けに寝て膝を立て、両手をお腹(おへその下あたり)に置きます。
- 息を吸ったとき → お腹が自然にふくらむ ✅
- 息を吐くとき → お腹が自然にへこむ ✅
- 吐くときに意識的におへそを背骨に向けて引き込もうとしても、うまく力が入らない → 腹横筋の機能が低下している可能性あり
【姿勢チェック】鏡で横から自分の立ち姿を確認する
産後は骨盤が前に傾き、腰が反りやすくなっていることがあります(反り腰)。横から見たときにお腹が前に出て腰が大きく反っている場合、体幹の支持力が低下しているサインです。
深部体幹筋を取り戻すためのアプローチ
「体幹を鍛える」というと、腹筋運動(クランチ)を思い浮かべる方が多いですが、産後の体幹回復には適していません。表層の筋肉を強く使う運動よりも、深部の筋肉(腹横筋・腹斜筋・骨盤底筋群)を丁寧に再活性化することが先決です。
① 腹横筋の再活性化(ドローイン)
仰向けに寝て膝を立て、息をゆっくり吐きながらおへそを背骨に向けてやさしく引き込みます。お腹を凹ませるというよりも、「内側からそっと引き上げる」感覚です。5〜10秒キープして、息を吸いながら緩めます。これを10回繰り返します。
慣れてきたら、四つ這いの姿勢でも同じことを行います。重力に抗って体幹を支える感覚が高まります。

② 腹斜筋・体幹の側方安定トレーニング
横向きに寝て体をまっすぐに保ちます。息を吐きながらおへそを引き込み(腹横筋をオン)、上側の脚をゆっくり持ち上げて2〜3秒キープします。10回ずつ左右行います。
慣れてきたら、膝をついたサイドプランク(横向きで膝と手で体を支える姿勢)に移行します。体幹の側方の安定性を取り戻すことで、片腕での抱っこ時の腰への偏った負担が軽減されます。

③ 授乳・抱っこ姿勢を見直す
育児中の体の使い方を少し変えるだけで、腰への累積負担はかなり変わります。
- 授乳時:背もたれに深く座り、授乳クッションを使って赤ちゃんを持ち上げる。前かがみになって授乳するより、体を立てたまま授乳できる環境を整える
- 抱っこ時:赤ちゃんをできるだけ体に引き寄せ、お腹に軽く力を入れてから持ち上げる。腰だけで支えるのではなく、体全体で抱く意識を持つ
- おむつ替え・床での作業:台の上でのおむつ替えに切り替えるか、床では片膝をついた姿勢にするだけで腰への負担が減る
④ 焦らず、少しずつ体を取り戻す
産後の体幹回復には時間がかかります。出産直後は特に、激しい運動や過度なストレッチは体への負担になります。まずはドローインのような「呼吸と連動した深部筋の活性化」から始め、少しずつ負荷を高めていくことが大切です。
作業療法士として伝えたいこと
リハビリ現場で多くの産後の方を見てきて感じるのは、「もっと早く来てくれれば」ということです。産後の体の変化は自然なことですが、放置すると慢性化しやすく、子育てが落ち着いた頃に「長年の腰痛」として定着してしまうことがあります。
作業療法士の視点でとくに大切にしているのは、「日常の育児動作の中でどう体を使うか」という点です。筋肉を鍛えることと同じくらい、授乳・抱っこ・おむつ替えといった毎日繰り返す動作の質を変えることが、産後腰痛の改善に直結します。
整体でのアプローチ
当院では、産後腰痛に対して骨盤まわりの筋肉の状態・体幹の使い方・日常の育児動作のクセを含めて評価し、施術とセルフケア指導を組み合わせてアプローチします。
「骨盤矯正」という言葉をよく目にしますが、当院が大切にしているのは骨盤の「位置」を変えることではなく、骨盤を支える筋肉の機能を回復させることです。体の内側から安定性を取り戻すことで、育児の中でも腰に負担をかけにくい体になっていきます。
赤ちゃん連れでのご来院も歓迎しています。「まず話だけでも」という方もお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 産後どのくらいから整体に来てもいいですか?
産後1ヶ月健診が終わり、主治医から日常生活の許可が出ていれば、基本的にご来院いただけます。ただし体の回復状態には個人差がありますので、不安な場合はLINEでご相談ください。
Q. 授乳中でも施術を受けられますか?
授乳中であることをお伝えいただければ、施術内容を調整して対応します。うつ伏せが難しい場合も、横向きや仰向けでの施術が可能です。
Q. 産後腰痛は放っておいても自然に治りますか?
軽度であれば体幹が回復するにつれて改善するケースもあります。ただし、体幹が弱いままの状態で育児動作が続くと慢性化しやすく、子育てが落ち着いた頃に「ずっと続いている腰痛」として定着してしまうことがあります。早めに体の使い方を整えておくことをおすすめします。
Q. 産後の体幹トレーニングはいつから始めてもいいですか?
ドローインのような深部筋への軽いアプローチは、産後早い段階から取り組めることが多いです。ただし体の回復状況によって異なりますので、産後1ヶ月健診の結果を目安にしながら、無理のない範囲で始めてください。
産後の肩こり・首のつらさが気になる方へ
授乳・抱っこの姿勢が続くと、腰だけでなく肩・首のつらさも同時に起きやすくなります。肩こりにお悩みの方はあわせてこちらもご覧ください。
腰全体の姿勢との関係が気になる方はこちら。
▶ 反り腰と腰・姿勢の問題|作業療法士が解説する原因と改善アプローチ
こんな方はご相談ください
- 産後から腰の重さ・痛みが続いている
- 抱っこや授乳のたびに腰がつらくなる
- 育児が忙しくて自分の体のことを後回しにしてきた
- 体幹を回復させたいが何から始めればいいかわからない
- 赤ちゃん連れで通える整体を探している
「自分の体のことは後回しにしてきた」という方こそ、ぜひ一度ご相談ください。


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